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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)5866号 判決 1955年2月01日

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人内田三代次の負担とする。

理由

被告人五名の上告趣意、被告人内田三代次を除く外四名の弁護人諌山博の上告趣意、被告人内田三代次弁護人池田清治の各上告趣意は後記のとおりである。

被告人同第一点、第二点、諌山弁護人同第一点、池田弁護人同第一点について。

地方公共団体が、その条例において、集団街路行進又は集団示威運動を行う場合に予じめ所管公安委員会に届出を要する旨の規定を設けることが、憲法一二条同二一条同二八条同九八条のいずれにも反するものでないことは、すでに当裁判所大法廷の判示するところである(昭和二六年(あ)第三一八八号同二九年一一月二四日判決参照)。本件の佐賀県条例は右のような行動のうち特定のものについて予じめ所管公安委員会に届出でなければならない旨定めたに過ぎないのであるから、なんら憲法に違反するところはなく、所論違憲の論旨は採用することはできない。

被告人同第三点、第四点、諌山弁護人同第二点について。

所論は、本件における警察職員の解散措置が不法であり違憲であると主張する。しかしながら原判決の判示するように、本件集会が無届であり、かつ判示説明のような事実経過であれば、本件の解散措置は正当であってなんら違法とは認められない。ひっきょう論旨は原審の事実認定と異なる見解に立って違法を主張するに帰し採用できない。(なお論旨中違憲の語があるけれど条規を挙げないばかりでなく、仮りに憲法二一条の意としても、論旨の実質は上記説明のとおりであり採用できない。)

被告人同第五点について。

所論は、訴訟法違反の主張であり適法な上告理由に当らない。そして原判決説明のとおり、検事は所論の訂正申立書において警察職員の職務執行行為の理由を訂正附加したに止まり、これによりなんら公訴事実の同一性を害するところはないから、所論のような刑訴法違反も認められない。

池田弁護人同第二点について。

所論は、本件条例が集団街路行進等の届出に対し公安委員会に条件を附する権限を与えていることをもって憲法二一条に違反するという趣旨を主張する。しかし被告人の第一点第二点について引用した大法廷判決の示すとおり、なんら憲法に反するものでないこと明らかである。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四〇八条、一八一条(被告人内田三代次に対し)により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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